18.内閣 18−1 行政権と内閣     1.行政権の概念   第65条 行政権は、内閣に属する。  (1)行政の意義    法の支配の観点から→行政は法律の執行である。    権力分立の観点から    *行政権の意義は何か。B →控除説(通説):行政権は全ての国家作用のうちから立法作用と司法作用を除いた残りの作用である。  r.国家作用の分化の歴史的沿革に適合する。行政活動を包括的に捉えうる。  有力説)法の下に法の規制を受けながら、国家目的の積極的な実現を目指して行なわれる全体として統一性を持っ  た継続的な形成的活動。c.必ずしも全ての行政活動を捉えられていない。   (2)法の支配と権力分立の観点の結合     →立法は一般的・抽象的法規範の定立、行政はその執行、司法はその執行が法にしたがっているかについての終局的      判定作用として観念する。 2.議院内閣制  (1)行政のあり方    立法権(議会)と行政権(政府)との関係 アメリカ型:議会と政府とを完全に分離し、政府の長たる大統領を民選とする。(大統領制) ドイツ型:君主制の下で、政府は君主に対して責任を負い、議会に対しては何の責任も負わない。(超然内閣) イギリス型:議会と政府を一応分離した上で議会による政府の民主的コントロールを及ぼすシステム。議院内閣制 スイス型:政府がもっぱら議会によって選任され、その指揮に服する。(議会統治制)    行政権内での関係−独任制・合議制 独任制:ある者が単独で行政権を担当する機関を構成する場合 合議制:複数人が行政権を担当する機関を構成する場合      [君主制]  君主が強力→典型的な君主制  君主と内閣が対等→二元主義型議院内閣制   君主が名目化→一元主義型議院内閣制   [共和制] 大統領が強力  大統領と内閣が対等  大統領が名目化      ※議院内閣制と大統領制の相違 議院内閣制    大統領制 権力分立との関係 緩やかな分離 厳格な分離 協力関係が破綻した場合 不信任制度と解散  不信任・解散なし 議会との関係 大臣は議院から選出  議員との兼職禁止 議会での出席発言権利義務がある 議会での出席発言権なし 民主主義の観点 首相は議会から選出(間接民主制) 国民から直接選出(直接民主制) 民意の反映と統合 民意の統合重視 民意の反映重視  (2)議院内閣制の本質    議会と政府が一応分立していること(三権分立)←自由主義の要請    政府が議会に対して連帯責任を負うこと(民主的責任行政)←民主主義の要請    *議会と内閣の権力均衡(内閣の自由な解散権)は議院内閣制の本質的要素か。A →均衡本質説 r.議院内閣制は元来君主と議会との権力の均衡を狙って成立した政治形態である。  責任本質説(通説):議院内閣制に共通する本質的要素は、政府の対議会責任であり、権力均衡(内閣の自由な        解散権)の要素は本質的なものではない。   r.民主主義の発展とともに議院内閣制の中にもさまざまな形態が生まれており、それらに共通する要素は、      政府の対議会責任である。 3.衆議院の解散   解散…任期満了前に議員全員の資格を失わせる行為。  自由主義的意義−内閣による議会への抑制手段    { 民主主義的意義−総選挙によって国民の審判を求めるという意義    *衆議院の解散権はどこにあるか。A     → 69条限定説:69条の場合のみ認める。  r.議会優位の構造を持つ議院内閣制を採用した憲法の全体構造の中で考えてみると、解散の実質問題      について69条にしか規定がないということは、69条の場合に限って解散を認める趣旨である。  c.解散権を行使できる場合が著しく限定される。  69条非限定説  イ)65条説 r.行政概念の控除説に立って、解散権は立法でも司法でもないから、行政であり、ゆえに内閣            に属するとする。     c.控除説の前提としての全国家作用は「国民支配作用」と考えるべきであり、そうすると解散権             はそこには含まれないから、控除しても行政に解散権は残らないはずである。  ロ)制度説:権力分立・議院内閣制という憲法全体の構造から内閣に解散権が帰属する、とする。   c.議院内閣制自体が一義的な原則ではない。仮に議院内閣制において内閣に自由な解散権が認めら       れるのが通例であるとしても日本国憲法がそのような議院内閣制を採用したかどうかは内閣に自 由な解散権があることを根拠づけえたとき始めていえることであり、トートロジーである。  ハ)7条説(通説):7条3号から内閣の助言と承認権に根拠を求める。   r.天皇の国事行為が国政に関する権能という性質を持たないのは、助言・承認権によって        内閣が実質的決定権を有するからである(つまり天皇の国事行為は形式的・儀礼的行為 である。尤もそもそも形式的・儀礼的行為なのではなく、内閣が実質的決定権を行使す  る結果形式的・儀礼的行為になると考える。)従って、解散権についても天皇の国事行 為とされていることから内閣が実質的決定権を有すると解される。   *解散権に限界はあるか。B    →芦部)解散は69条の場合を除けば、 衆議院で内閣の重要案件が否決または審議未了の場合、 政界再編成等に     より内閣の性質が基本的に変わった場合、 総選挙の争点でなかった新しい重大な政治的課題に対処する場      合、 内閣が基本政策を根本的に変更する場合、 議員の任期終了時期が接近している場合などに限られる。   *衆議院の自律的解散は許容されるか。B    →通説)許容されない。r.規定がない。多数者の意思によって、少数者の議員たる地位が剥奪されることになる。 少数説)肯定する。r.国民主権と国会の最高機関性から、衆議院自身が自律的に解散することも許容される。 4.独立行政委員会  (1)意義   合議制の行政機関である点で通常の行政機関と異なり、多かれ少なかれ内閣から独立して職務を遂行し、       通常準立法権及び準司法権をも併有する制度  (2)具体例   ‥国家公安委員会・公正取引委員会・選挙管理委員会・公害等調整委員会・中央労働委員会・司法試験管理委員会・    公安審査委員会・人事院など  (3)憲法との関係   *内閣から独立して活動している行政委員会は、行政権が内閣に属するとする憲法65条に反しないか。A    →65条は一切の例外を認めていないと考えるアプローチ  :独立行政委員会も内閣のコントロール下(任命権・予算権)にあり、合憲である。  c.任命権は国会の同意が必要であり、予算についても内閣の編成権に制限が課されていることもある。    任命権と予算権だけで内閣のコントロール下にあるとするならば、裁判所も同様となってしまう。 65条は一定の例外を認めていると考えるアプローチ  r. 文言上の理由。65条には76条とは異なり“すべて”とは書かれていない。 権力分立との関係では、行政権が内閣に属するというのは、内閣に立法権・司法権が属さないことに意味        があるのであって、内閣以外の行政機関が行政権を行使しても、権力分立の目的に反しない。 民主的責任行政確保との関係では、国会が直接コントロールしうる体制になっているか、職務の性質上内       閣にも国会にもコントロールに適さないものである場合には、内閣の責任を問いえないとしても問題にす     る必要はない。   *準立法権作用−規則制定権は41条に反しないか。→政治的中立性が強いのである程度の包括性は許される。   *準司法権作用−行政審判は司法権を奪うことにならないか。 18−2 内閣の組織     1.内閣の組織    66条  内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。     内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。    内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。    内閣総理大臣の要件= 国会議員(67条1項) 在職要件である。  文民(66条2項)    *文民とは→ 職業軍人の経歴を持たない者  {職業軍人の経歴を持たない者に加えて、現在職業軍人でない者(自衛官) 2.内閣総理大臣  (1)意義  内閣の首長    67条  内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先      だつて、これを行ふ。    衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開        いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に、        参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。    (2)権限   1)国務大臣の任免権 68条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。    内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。    ‐内閣総理大臣の専権に属し、閣議に欠けることを要しない。内閣は助言と承認を拒みえない。   2)内閣を代表して議案を国会に提出する等の権限・行政各部の指揮監督 72条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並び     に行政各部を指揮監督する。     3)法律・政令に連署 74条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。    ‐連署は義務であって、拒否することは許されない。 連署を欠いても法律等の効力に影響はない(74条)。74条は法律の執行責任を示すに過ぎない。   4)国務大臣の訴追に対する同意 75条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。    但し、これがため、訴追の権利は、害されない。[ 時効の進行は停止する] 趣旨→内閣の統一性保持、他権力の不当な圧力の防止    ‐「逮捕」を含む。国務大臣には「内閣総理大臣」を含む。   5)内閣法上の権能‥閣議の主催・主任大臣間の権限の裁定・行政各部の処分・臨時代理の指定等 3.内閣の総辞職   69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散され      ない限り、総辞職をしなければならない。   70条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職を      しなければならない。  71条 前2条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。    内閣が総辞職する場合 衆議院の内閣不信任案可決又は内閣信任案否決による総辞職(69条) 内閣総理大臣の欠缺による総辞職(70条前段) … 議員資格争訟裁判・議員の除名・選挙関係訴訟による国会議員の議席喪失/ 辞職/ 死亡 *衆議院の解散・衆議院議員の任期満了の時から、新国会召集に至るまでの期間に内閣総理大臣が欠けた場合  →先例)総辞職が必要である。この時点で総辞職し、新国会召集の時に重ねて総辞職はしない。 総選挙後の総辞職(70条後段)…衆議院議員の総選挙後初めて国会召集があったとき 18−3 内閣の権能と責任     1.内閣の活動   閣議の議決方法   閣議と司法審査   →通判)及ばない。極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為である。 2.内閣の職権  (1)一般行政事務に関する権限    73条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。   1.法律を誠実に執行し、国務を総理すること。     2.外交関係を処理すること。   3.条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。   4.法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。   5.予算を作成して国会に提出すること。   6.この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任が ある場合を除いては、罰則を設けることができない。   7.大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。    法律の執行と国務の総理  _  (2)天皇の国事行為についての助言と承認権(3条・7条)  (3)国会との関係における権限      国会の臨時会の召集(53条)  参議院緊急集会の請求(54条2項)      国会への議案提出、一般国務及び外交関係についての報告(72条)  衆議院解散の決定      決算審査・財政状況の報告(90条1項・91条) 予備費を支出し、事後に国会の承認を求めること(87条)  (4)裁判所との関係における権限      最高裁判所長官の指名(6条2項)  最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官の任命(79条1項・80条) 2.内閣の責任   明治憲法‥天皇に対して、各大臣が単独に負う。   日本国憲法‥行政権全般について国会に連帯して責任を負う(66条3項) 政治責任